大乗寺・地蔵堂

大乗寺・地蔵堂

『地蔵菩薩さま』 坂村真民

地蔵菩薩さま

あなたは左手に宝珠を持ち

右手に長い錫杖を握り

そして千葉の青蓮華に

はだしで立っておられる

わたしはあなたのそんなお姿に

お会いする喜びで

この禅堂に坐りに来るのです

あなたの広大なお慈悲

あなたの深遠なご誓願

無学なわたくしには

何も知り得ないのですが

あなたのお姿を仰いでいますと

自然とお心がわかってくるような

気がいたします

朝の光があなたのお足に

ちらちらしている時など

あなたはまるで生きておられるようです

歩いておられるようです

今日もそんな気がして

あなたの大きなお姿を

じっと仰いで坐っていました

地蔵菩薩さま

あなたのお顔もまだ見えない

暗いうちから

禅堂に坐っておりますと

初めは独りだ独りだと思っていたことが

いつの間にかあなたと二人だという

なつかしい温かいものが流れてきて

わたくしはちっとも淋しくは

ありませんでした

恐ろしい人生も恐ろしく

ありませんでした

苦しい人生も苦しく

ありませんでした

ふくろうが鳴き

いろいろの虫が鳴き

夜明けの鳥が鳴き

だんだんと音が増してきて

あなたのお顔もはっきりしてき

あなたの長いおん杖おん玉

そんなものが見えそめてきますと

わたくしは定をやめて

じっとあなたのお姿を仰いでいる日が

いくどもあります

殊にあなたの左手の金色のおん玉

それをお持ちになっておられるおん手の

いたましいお疵を見ていますと

あなたの御誓願の至難さが

しみじみと思われてなりません

世間虚仮

唯仏是真

そんな悲しいお言葉の

真実さがわかってまいります

ああ

あなたのいつもお持ちになっている

宝珠の深い意味を

みんながわかってくれる

正しい平和の日が

地上にいつまいるのでございましょうか

 

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